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「芍薬を庭に植えてはいけない」は嘘?理由と育て方のコツを解説

芍薬を庭に植えてはいけないイメージ

「芍薬を庭に植えてはいけない」という言葉を耳にして、美しい花を庭に迎えることをためらってはいませんか。その言葉の背景には、もしかしたら怖い花言葉があるのではないか、あるいは植えっぱなしにするとどうなるのかといった不安が隠れているかもしれません。

この記事では、芍薬の庭植えに関するあらゆる疑問にお答えします。芍薬と牡丹の違いといった基本的な知識から、シャクヤクの開花時期、そして植え替え時期や冬越しの方法、さらには芍薬の花が終わった後の手入れに至るまで、具体的な育て方のポイントを解説。地植えと鉢植え、それぞれの育て方の難易度にも触れ、あなたの環境に合った方法が見つかるはずです。また、古くから漢方として利用されてきた芍薬が持つ効果効能についてもご紹介します。

失敗や後悔をしないために、正しい知識を身につけて、芍薬の魅力を最大限に引き出すお手伝いをします。

この記事のポイント

  • 「芍薬を庭に植えてはいけない」と言われる具体的な理由
  • 失敗しないための芍薬の正しい育て方と管理のコツ
  • 花後の手入れや植え替え、冬越しといった年間を通した作業
  • 芍薬と牡丹の見分け方や花言葉、薬用としての側面

芍薬を庭に植えてはいけないと言われる本当の理由

芍薬を庭に植えてはいけないイメージ

ポイント

  • 美しい花の代表、芍薬と牡丹の違い
  • 芍薬に怖い花言葉はあるの?
  • 植えっぱなしにするとどうなる?
  • シャクヤクの開花時期はいつ?
  • 芍薬の庭植えで注意すべき点

美しい花の代表、芍薬と牡丹の違い

芍薬を庭に植えてはいけないイメージ

芍薬と牡丹は、どちらもボタン科ボタン属に属する近縁の植物で、豪華で美しい大輪の花を咲かせるため混同されがちです。しかし、植物学的には異なる特徴を持っており、その違いを理解することが、それぞれの性質に合った適切な育て方への第一歩となります。

最も根本的な違いは、芍薬が冬になると地上部がすべて枯れて根の状態で越冬する「草本植物(宿根草)」であるのに対し、牡丹は冬も幹や枝が木として残り、春になるとその枝から新芽を出す「木本植物(落葉低木)」である点です。

このため、年間のサイクルや剪定の考え方が全く異なります。有名な「立てば芍薬、座れば牡丹」という言葉は、すらりと伸びた茎の先に花を咲かせる芍薬の立ち姿と、枝分かれした株から花が咲く牡丹のどっしりとした姿を、美しい女性の立ち居振る舞いに例えたものです。

具体的な見分け方を、以下の表に詳しくまとめました。

特徴 芍薬(シャクヤク) 牡丹(ボタン)
分類 草本植物(草) 木本植物(木)
茎・幹 緑色で草質。毎年地面から新しい茎が伸び、冬には枯れる 木質化して茶色い。年々太くなり、冬も枝として残る
全体的に丸みを帯び、表面に光沢がある。切れ込みはない 深い切れ込みが入り、ギザギザしている。表面に光沢はない
開花期 5月~6月頃(牡丹よりやや遅い) 4月下旬~5月上旬頃
花の散り方 花の形を保ったまま、花首からぽとりと落ちる 花びらが一枚ずつハラハラと散っていく
香り 品種によるが、多くは甘く爽やかな香りを持つ ほとんどの品種で香りはしないか、ごく微か

近年では、この芍薬と牡丹を交配させて生まれた「伊藤ハイブリッド(Itoh Hybrid Peony)」という品種群も人気を集めています。これは、牡丹のような豪華な花色を持ちながら、性質は芍薬に近く、冬には地上部が枯れるという、両者の良いところを兼ね備えた新しいタイプの芍薬です。

芍薬に怖い花言葉はあるの?

芍薬はその華やかな姿から、贈り物としても非常に人気がありますが、花を贈ったり庭に植えたりする際に、縁起の悪い意味や怖い花言葉があるのではないかと心配される方もいるかもしれません。

結論から言うと、芍薬の代表的な花言葉に怖いものはなく、むしろポジティブで美しい意味合いがほとんどです。

代表的な花言葉は「恥じらい」「はにかみ」「慎ましさ」で、これは夕方になると花びらを閉じる習性や、恥じらうようにうつむき加減に咲き始める姿に由来すると言われています。また、「幸せな結婚」という花言葉も持っており、その豪華さと相まってウェディングブーケや会場装花として非常に人気が高い花です。

ただし、花の色によっては少し異なる意味合いを持つことがあるため、知っておくと良いでしょう。

  • ピンクの芍薬: 「恥じらい」「はにかみ」など、芍薬全体のイメージを代表する花言葉です。
  • 赤い芍薬: 「誠実」「威厳」といった、力強く真摯なイメージを持ちます。
  • 白い芍薬: 「満ち足りた心」「幸せな結婚」など、純粋で幸福感に満ちた意味合いが強いです。
  • 紫の芍薬: 前述の通り、一部で「怒り」「憤怒」という花言葉が付けられることがあります。これは、西洋文化において紫が高貴さや威厳を示す色である一方、それが転じて厳しさや近寄りがたさを象徴すると解釈されたためと考えられます。

したがって、もし贈り物として選ぶのであれば、ピンク、赤、白などの色の芍薬を選ぶと、誤解なく温かい気持ちを伝えることができるでしょう。紫の芍薬を贈りたい場合は、他の色の花と組み合わせるなどの工夫をすると良いかもしれません。

植えっぱなしにするとどうなる?

芍薬は基本的に丈夫な多年草なので、一度庭に植えれば毎年花を咲かせてくれます。しかし、その丈夫さゆえに「植えっぱなし」で何年も放置してしまうと、いくつかの問題が生じ、徐々に花の美しさが損なわれていきます。これが、「庭に植えてはいけない」と言われる実用的な理由の一つになっています。

株の過密化と病害虫の発生

芍薬は年々地下の根茎が成長し、株が大きくなっていきます。数年間植えっぱなしにしていると、たくさんの茎が密集して生えるようになり、株の中心部の風通しと日当たりが著しく悪化します。

湿度が高い状態が続くと、カビが原因となる「うどんこ病」や「灰色かび病」が発生する絶好の環境となってしまうのです。一度病気が発生すると、薬剤を散布しても密集した部分には届きにくく、完全に防除するのが難しくなります。

連作障害と栄養不足

同じ場所で長年同じ植物を育て続けると、「連作障害」と呼ばれる現象が起きることがあります。これは、土の中の特定の養分だけが過剰に消費されて栄養バランスが崩れたり、その植物を好む特定の土壌病原菌が蓄積したりすることで、植物の生育が悪くなる状態を指します。

芍薬も例外ではなく、長年植えっぱなしにしていると土がやせ、根の活力が低下します。結果として、株全体が老化し、花を咲かせるエネルギーが不足して、花つきが悪くなったり、一つ一つの花が小さくなったりしてしまうのです。

これらの問題を避けるためには、数年に一度、株をリフレッシュさせるための「株分け」を兼ねた植え替え作業が非常に大切になります。地植えの場合は5~10年、鉢植えの場合はより根が詰まりやすいため2~3年ごとに行うのが、美しく健康な花を長く楽しむための鍵となります。

シャクヤクの開花時期はいつ?

シャクヤクがその豪華な花を披露してくれるのは、春の終わりから初夏にかけての、気候の良い季節です。一般的に、日本での開花時期は5月から6月にかけてが見頃となります。多くの地域で、バラの季節と重なるか、少し早く咲き始めることが多く、春のガーデンを華やかに彩る主役級の存在です。

開花のタイミングは、品種の系統やその年の気候によって少しずつ変動します。

  • 品種による違い:
    芍薬には非常に多くの園芸品種があり、開花時期が早い「早生(わせ)」、一般的な時期に咲く「中生(なかて)」、そして遅めに咲く「晩生(おくて)」に分けられます。例えば、洋芍薬の有名な品種である「サラ・ベルナール」は中生~晩生咲きとして知られています。これらの異なる開花時期の品種を組み合わせて植えることで、5月上旬から6月下旬頃まで、途切れることなく花を楽しむことが可能です。
  • 気候による変動:
    当然ながら、気候も開花に大きく影響します。暖かい地域ほど開花は早く、九州などではゴールデンウィーク頃に見頃を迎えることもあります。一方、東北や北海道などの寒冷地では、開花が6月中旬から下旬になることも珍しくありません。
  • つぼみから開花まで:
    芍薬のつぼみは、固く小さな状態からゆっくりと膨らみ、色づいてきます。つぼみが十分に膨らみ、指で軽く押して柔らかさを感じるようになれば、通常2~3日で開花します。まだ固く締まっているつぼみの場合は、開花まで1週間以上かかることもあります。

このように、芍薬は一年のうち限られた期間しかその姿を見せてくれませんが、だからこそ、その開花は一層待ち遠しく、特別な季節の訪れを感じさせてくれます。

芍薬の庭植えで注意すべき点

芍薬を庭で元気に育て、毎年美しい花を咲かせるためには、その生育特性を理解し、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。これらの条件が満たされないと、花が咲かない、病気にかかるなど、栽培の失敗につながりやすく、「庭に植えてはいけない」という言葉の背景にもなっています。

日当たりと風通し

芍薬は日光を非常に好む植物で、エネルギー源である光合成を十分に行うことが、良い花を咲かせるための絶対条件です。1日に最低でも5~6時間以上は直射日光が当たる、日当たりの良い場所を選んでください。日照不足は、茎がひょろひょろと弱々しく育ち、花芽がつかない「不開花」の最も大きな原因となります。

ただし、夏の午後の強烈な西日は、葉を傷めたり土を極度に乾燥させたりすることがあるため、可能であれば午前中にたっぷりと日が当たり、午後は木漏れ日になるような環境が最も理想的と言えます。また、病気を予防する観点から風通しの良さも極めて重要です。

建物や塀の陰、他の植物が密集している場所は、空気がよどみ湿度が高くなるため、避けるのが賢明です。

水はけの良い土壌

芍薬の栽培で最も注意すべき点が、土壌の排水性です。芍薬の根は太く、酸素を多く必要としますが、水はけが悪い土壌では根が常に水に浸かった状態になり、呼吸ができずに根腐れを起こしてしまいます。一度根腐れを起こすと、株全体が枯れてしまうことも少なくありません。庭の土が粘土質で水たまりができやすい場合は、必ず土壌改良を行いましょう。

植え穴を通常よりも大きく(直径・深さともに50cm程度)掘り、掘り上げた土に腐葉土や堆肥を3~4割ほど混ぜ込み、さらに水はけを良くするパーライトや川砂などを加えるのも効果的です。

土を盛り上げて一段高くした場所に植える「高植え(レイズドベッド)」にすることも、排水性を確保する上で非常に有効な手段です。

病害虫のリスク

前述の通り、風通しが悪い環境では「うどんこ病」(葉が白い粉を吹いたようになる)や「灰色かび病」(花や茎が褐色になって腐る)といったカビが原因の病気が多発します。

これらを予防するには、株間を十分に空けて植え付け、成長に応じて古い下葉を取り除くなどして、株元の風通しを常に良く保つことが大切です。害虫では、春に新芽や蕾に「アブラムシ」がびっしりとつくことがあります。

また、夜間に活動して葉や蕾を食害する「ヨトウムシ」や「ネキリムシ」にも注意が必要です。いずれも発見したらすぐに適切な殺虫剤で駆除するか、数が少なければ手で取り除きましょう。定期的な観察が、被害を最小限に食い止める鍵となります。

芍薬を庭に植えてはいけないは嘘?栽培のコツ

芍薬を庭に植えてはいけないイメージ

ポイント

  • 地植えと鉢植えでの育て方の難易度
  • 芍薬の花が終わった後の手入れ方法
  • 適切な植え替え時期と方法
  • 芍薬の冬越しのポイント
  • 漢方としての芍薬の効果効能
  • これで納得!芍薬を庭に植えてはいけない?

地植えと鉢植えでの育て方の難易度

芍薬を育てる方法は、大きく分けて「地植え」と「鉢植え」の2つがあります。それぞれに異なるメリットとデメリットが存在し、管理の手間や難易度も変わってきます。ご自身の住環境やガーデニングにかけられる時間などを考慮して、最適な方法を選ぶことが成功への近道です。

地植えの育て方と難易度

地植えは、芍薬本来の生命力を最大限に引き出せる育て方です。一度、適切な場所に根付けば、地下で自由に根を張り巡らせることができるため、株は年々大きくがっしりと成長します。その結果、鉢植えに比べて花数も多く、大輪の花を咲かせる可能性が高まります。

また、土壌が持つ保水力のおかげで、真夏の日照りが続く時期を除けば、水やりの手間はほとんどかかりません。数年間は植え替えの必要がないため、長期的な視点で見れば管理は比較的楽と言えるでしょう。

しかし、地植えの最大の難点は「場所選びの失敗が許されない」という点です。前述した日当たりや水はけの条件が悪い場所に植えてしまうと、後からその場所を移動させるのは株に大きな負担をかけるため、ほぼ不可能です。

将来的に株がどれくらい大きくなるかを想定し、周囲の植物との間隔も十分に確保しておく必要があります。最初の土壌改良と場所の選定という初期投資さえしっかりと行えば、初心者でも雄大な芍薬の姿を楽しむことができます。

鉢植えの育て方と難易度

鉢植えは、庭がないベランダやテラスでも芍薬を育てられる点が最大の魅力です。季節や天候に応じて鉢を移動させることができるため、梅雨の長雨の時期は軒下に避難させたり、夏の強すぎる西日から守ったりと、最適な環境を人為的に作り出すことが可能です。

一方で、管理の手間は地植えよりも格段に多くなります。鉢の中の土は量が限られているため非常に乾燥しやすく、春から秋の成長期には、水やりを忘れるとすぐに水切れを起こしてしまいます。夏場は朝夕2回の水やりが必要になることもあります。

また、限られた土の中から養分を吸収するため、肥料切れを起こしやすく、定期的な施肥が欠かせません。そして、最も重要なのが2~3年ごとの植え替えです。これを怠ると鉢の中で根がぎゅうぎゅう詰めになる「根詰まり」を起こし、生育が著しく悪化してしまいます。

鉢を選ぶ際は、根が深く伸びる芍薬の性質に合わせて、直径・深さともに十分な大きさ(最低でも8号以上、深鉢が理想)のものを選ぶことが大切です。

芍薬の花が終わった後の手入れ方法

芍薬を庭に植えてはいけないイメージ

 

来年も変わらず、あるいは今年以上に美しく豪華な花を咲かせるためには、芍薬の花が終わった直後から始まる手入れが年間管理の中で最も重要と言っても過言ではありません。この時期の手入れが、来シーズンの花の数や質を決定づけます。

花がら摘み:来年のためのエネルギー温存

花が咲き終わると、植物は子孫を残すために種子を作ろうとします。この種子形成には、株が蓄えた栄養分が大量に消費されてしまいます。来年もたくさんの花を咲かせるためには、この無駄なエネルギー消費を防ぎ、栄養を株本体、特に来年の花芽が作られる根に集中させることが不可欠です。

そのため、花びらが散り始め、色あせてきたら、できるだけ速やかに「花がら摘み」を行います。切り取る位置は、花がついているすぐ下の茎の部分です。このとき、茎についている葉は、光合成によって栄養を作り出すための大切な「工場」なので、絶対に切り落とさないように注意してください。あくまで咲き終わった花だけを取り除くのがポイントです。

すべての花を摘み終えることで、株は消耗を抑え、来シーズンへの準備に専念することができます。

お礼肥(おれいごえ):消耗した体力の回復

満開の花を咲かせるという大仕事は、植物にとって非常に大きなエネルギーを要する活動です。花が終わった後の芍薬は、いわば体力を使い果たした状態にあります。そこで、消耗した株を回復させ、元気に夏を乗り越えさせるために施すのが「お礼肥」です。

6月頃、すべての花がら摘みが終わったタイミングで、株元に肥料を与えます。この時期の肥料は、根や株の成長を助けるリン酸やカリウムをやや多めに含んだ、緩効性の化成肥料や有機質肥料が適しています。液体肥料を水やり代わりに与えるのも手軽で効果的です。

このお礼肥によって、株は体力を取り戻し、夏の間に充実した株となり、秋にかけて形成される翌年の花芽を力強く育てることができるのです。

適切な植え替え時期と方法

芍薬を庭に植えてはいけないイメージ

芍薬は、太く直根性の根を持つため、頻繁な植え替えを嫌う植物です。しかし、何年も同じ場所で育て続けると、株の老化や土壌環境の悪化により生育が衰えてきます。そのため、美しく健康な状態を長く維持するためには、数年に一度、株をリフレッシュさせるための植え替えと株分けが不可欠な作業となります。

最適な植え替え時期は、地上部の葉が黄変し始める秋、9月下旬から10月にかけてです。この時期は、夏の間の成長が一段落し、植物が休眠に入る準備を始めるタイミングです。同時に、地中では翌年に向けて新しい白い根(細根)が活動を始める重要な時期でもあります。この新根が動き出すタイミングで植え替えを行うことで、根へのダメージを最小限に抑え、本格的な冬が来る前に新しい土に順応し、根付くことができるのです。

春に植え替えると、その年の花は見られないだけでなく、株が大きく弱ってしまうため絶対に避けるべきです。

植え替えと株分けの手順は、以下の通り慎重に行います。

  1. 株の掘り上げ:
    葉が枯れてきたら、地上部を株元から10cmほどの高さで刈り取ります。根を傷つけないよう、株の周囲を半径30cm以上、深さも30cm以上を目安に、スコップなどで大きく、そして深く掘り進めます。根はゴボウのように太く、もろくて折れやすいため、テコの原理で無理にこじ上げるのではなく、周囲の土を丁寧に取り除きながら、株全体を優しく持ち上げるように掘り出します。
  2. 株分け:
    掘り上げた株は、付着している土を優しく手で落とします。根茎をよく観察し、赤やピンクの来年の芽(花芽)の位置を確認します。一つの新しい株に、この芽が3~5個程度つくように、大きな株であれば手で割ったり、固い場合は清潔なナイフやハサミを使って切り分けます。切り口には、病原菌の侵入を防ぐために、草木灰や殺菌剤の粉末を塗布しておくと安心です。
  3. 植え付け(浅植えの徹底):
    新しい場所や一回り大きな鉢に植え付けます。このとき、植え付ける「深さ」が、その後の生育を左右する最も重要なポイントです。芽の先端が、地面の高さから見て2~5cmほど下に埋まる程度の「浅植え」を徹底してください。深く植えすぎると、根が十分に酸素を吸収できず、葉ばかりが茂って花が咲かない「不開花」の最大の原因となります。植え付け後は、根と土が密着するように、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水を与えます。

芍薬の冬越しのポイント

芍薬を庭に植えてはいけないイメージ

芍薬の原産地はシベリアなど寒さの厳しい地域であり、その性質を受け継いで非常に優れた耐寒性を持っています。そのため、日本のほとんどの地域(東北や北海道を含む)では、特別な防寒設備なしで、屋外での冬越しが可能です。冬の寒さにしっかりと当たることが、春に美しい花を咲かせるための休眠打破につながります。

地上部の整理と寒肥

秋が深まり、10月下旬から11月頃になると、芍薬の葉や茎は黄色く変色し、やがて自然に枯れてきます。これは植物が冬の休眠に入るための自然な生理現象です。地上部が完全に枯れたら、病害虫の越冬場所になるのを防ぐため、また春に新しい芽がスムーズに出られるようにするため、地際の部分で全ての茎を刈り取ります。

刈り取った茎葉は、病原菌が潜んでいる可能性があるため、畑の外で処分するのが賢明です。

茎を刈り取った後の12月から2月にかけて、「寒肥(かんごえ)」を施します。これは、春からの成長の元となる栄養を、冬の間にゆっくりと土に供給するための重要な作業です。株元の周囲に数か所、浅い溝を掘り、そこに油かすや骨粉、鶏ふんといった遅効性の有機質肥料や、緩効性の化成肥料を施し、土をかぶせておきます。

霜と乾燥からの保護(マルチング)

寒さには強い芍薬ですが、冬の乾いた寒風や強い霜は、土の表面近くにある来年の芽を傷める可能性があります。

特に、植え付けたばかりの若い株や、寒さの厳しい地域では、株元を保護してあげるとより安心です。刈り取りと寒肥が終わった株元に、腐葉土やバーク堆肥、ワラなどを5~10cmほどの厚さに敷いて「マルチング」をします。これにより、土の急激な温度変化や乾燥を防ぎ、霜柱による根の持ち上がりを防ぐ効果も期待できます。

鉢植えの場合も基本的な管理は同じですが、鉢土は地植えよりも凍結しやすいため、寒風が直接当たる場所は避け、建物の南側や軒下などに移動させると良いでしょう。冬の間も土は少しずつ乾燥していくので、月に1~2回、晴れた暖かい日の午前中に、土の表面が完全に乾いていたら水を与えるようにします。

漢方としての芍薬の効果効能

芍薬は、その類まれな美しさで観賞用として愛される一方で、その根は古くから東洋医学の世界で非常に重要な生薬として重宝されてきました。漢方では「芍薬(シャクヤク)」という名で知られ、数多くの漢方処方に欠かせない存在です。

芍薬の根には、ペオニフロリン、アルビフロリンといったモノテルペン配糖体や、タンニン、精油成分などが含まれており、これらの複合的な作用によって多様な薬効を発揮します。特に有効成分であるペオニフロリンには、優れた鎮痛、鎮静、鎮痙(けいれんを鎮める)、抗炎症、血管拡張といった幅広い作用が科学的にも報告されています。

漢方の臨床では、芍薬はその加工法によって「白芍(びゃくしゃく)」と「赤芍(せきしゃく)」に使い分けられることがあります。白芍は根の皮を剥いてから乾燥させたもので、主に血を補い、痛みを和らげる「補血」「緩急止痛」の働きに優れるとされます。一方、赤芍は皮をつけたまま乾燥させたもので、血の滞りを改善し、熱を冷ます「活血」「清熱涼血」の働きが強いとされています。

これらの作用から、漢方では特に以下のような目的で処方に配合されます。

  • 婦人科系の諸症状:
    芍薬は「婦人病の要薬」と称され、血行を促進し、ホルモンバランスの乱れからくる不調を整える働きが期待されます。月経不順、月経痛、冷え性、貧血、更年期障害などの改善を目的として、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」や「加味逍遙散(かみしょうようさん)」などに中心的な生薬として用いられます。
  • 筋肉のけいれんや痛み:
    筋肉の異常な緊張を和らげる効果に優れており、急な腹痛や足のつり(こむら返り)などに対して用いられる「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」は、即効性があることで有名です。
  • 内臓や全身の痛み:
    鎮痛・抗炎症作用を活かし、胃痛、頭痛、関節痛、神経痛など、体内の様々な痛みを緩和する目的でも広く応用されます。

このように、芍薬は単に美しいだけでなく、特に女性の健康と深く関わり、体の緊張を解きほぐし、痛みを和らげる力を持つ、非常に価値の高い薬用植物なのです。

これで納得!芍薬を庭に植えてはいけない?

この記事を通して、芍薬の魅力と栽培のポイントについて、より深く掘り下げてきました。最後に、今回の内容の要点を箇条書きでまとめます。

  • 「庭に植えてはいけない」は禁止ではなく、栽培上の注意点を指す
  • 芍薬は草、牡丹は木であり、葉の光沢や茎の質で簡単に見分けられる
  • 花言葉は「恥じらい」「幸せな結婚」が代表的で、怖い意味は基本的にない
  • 紫色の芍薬には「怒り」という花言葉があるため贈り物には注意が必要
  • 植えっぱなしは株の過密化を招き、風通しを悪化させ病気の原因となる
  • 連作障害や土の栄養不足で、年々花つきが悪くなる可能性がある
  • 美しさを保つには5~10年に一度の植え替えと株分けが効果的
  • 開花期は5月~6月で、品種の組み合わせで長期間楽しめる
  • 成功の絶対条件は、1日に半日以上日が当たる場所を選ぶこと
  • 水はけの悪い土壌では根腐れしやすいため、土壌改良が不可欠
  • 病害虫予防の鍵は、株元の風通しを常に良好に保つこと
  • 地植えは管理が楽だが、場所の選定を間違えると修正が困難
  • 鉢植えは管理の自由度が高いが、水やりや植え替えの手間がかかる
  • 花が終わったら速やかに花がらを摘み、株のエネルギー消耗を防ぐ
  • 花後には「お礼肥」を与え、消耗した株の体力を回復させることが大切
  • 植え替えの最適期は、新根が活動を始める秋の9月下旬~10月
  • 深く植えすぎると花が咲かなくなるため「浅植え」を徹底する
  • 冬の寒さに当たることで休眠打破され、春の開花につながる
  • 冬越し前に枯れた茎を刈り取り、「寒肥」を施すと春の生育が良くなる
  • 根は漢方薬として、特に婦人科系の不調や痛みの緩和に広く用いられる
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過去に植物を枯らした経験から「もう失敗したくない…」と思い、信頼できる育て方の情報だけをまとめています。一緒にグリーンライフを楽しみましょう!

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