春から初夏にかけて、まぶしいほどの美しい花を次々と咲かせてくれるオステオスペルマム。見ているだけで元気をもらえますよね。でも、「オステオスペルマム 伸びすぎ」と検索してここにたどり着いたあなたは、もしかすると、愛情をかけて育てていたはずが、気づけば茎ばかりが、まるで「もやし」みたいにひょろひょろと間延びしてしまい、「どうしてこんな姿に?」と、がっかりしているのではないでしょうか。
その「徒長(とちょう)」という現象、実はちゃんとした原因があるんです。この記事では、なぜオステオスペルマムが伸びすぎてしまうのか、その根本的な原因である日当たり不足の対策から、伸びた株をリセットするための大切な「切り戻し」の時期、そして具体的な剪定方法まで、まるで隣で一緒にお手入れしているような感覚で、分かりやすく解説していきますね。
さらに、「勇気を出して切ったのに、切り戻し後に咲かない…」といった、よくある失敗の原因や、伸びたわりに花が少ない状況の改善策にもしっかり触れていきます。もう一度、あのこんもりと咲き誇る美しい花姿を取り戻すために、背丈を抑えるコツを掴み、株をコンパクトに保つ方法をマスターしましょう。鉢植えと地植え、それぞれの管理ポイントも網羅しています。あなたのオステオスペルマムを、再び元気で美しい姿に再生させるお手伝いをさせてください。
この記事のポイント
- オステオスペルマムが伸びすぎる根本的な原因
- 徒長した株をリセットする切り戻しの正しい時期と方法
- 鉢植えと地植え、それぞれの伸びすぎ対策
- 切り戻し後に再び美しい花を咲かせる管理のコツ
オステオスペルマムが伸びすぎる原因と対処法
伸びすぎてしまったオステオスペルマム、どうしてあんな姿になっちゃうんでしょうか。実は、それにはちゃんとした理由があるんです。ここでは、なぜそうなってしまうのか、その「ナゼ?」を解明しながら、どうすれば元の可愛い姿に戻せるのか、具体的なリセット方法を見ていきましょう。原因がわかれば、対策はもう難しくありませんよ。
- オステオスペルマムが徒長する原因
- 日当たり不足の対策と置き場所
- 適切な切り戻し時期はいつ?
- 伸びすぎた時の剪定方法
- 地植えで伸びすぎの対処法
- 鉢植えの管理ポイント
オステオスペルマムが徒長する原因
オステオスペルマムの株姿が乱れ、茎ばかりが間延びしてしまう「徒長(とちょう)」。本当にがっかりしてしまいますよね。その主な原因は、大きく分けて「日照不足」と「高温多湿」という、2つの大きなストレスなんです。
まず一番の原因が「日照不足」。オステオスペルマムは、もともと南アフリカのカラッとした気候で育った植物。太陽の光がなによりも大好きなんです。それなのに、お日様の光を浴びる時間が足りないと、植物が「もっと光が欲しいよ!」と必死になって光を探し、茎をひょろひょろ〜っと上に伸ばそうとします。これが、徒長が起こる最も一般的で最大の原因です。室内や建物の陰に置いていると、あっという間にこの症状が出てしまいます。
そしてもう一つの原因が、日本の気候特有の「高温多湿」。カラッとした気候が大好きな彼らにとって、ジメジメとした梅雨や、蒸し暑い真夏は本当に過酷な環境なんです。湿度が高いと株が蒸れてしまい、それを嫌って風通しを良くしようと不自然に茎が伸びたり、株自体の体力が奪われて元気がなくなり、結果としてだらしない姿になったりします。
肥料の「与えすぎ」も徒長を招きます
植物を元気にしたい一心で、ついつい肥料をたくさんあげていませんか? 実はそれも徒長の原因になることがあるんです。特に、肥料の成分の中でも「窒素(N)」は、葉や茎を成長させる役割を持っています。人間で言えば、体を作るための「たんぱく質」のようなもの。こればかりを与えすぎると、花を咲かせることよりも茎や葉を育てることにエネルギーが集中してしまい、結果として茎ばかりが茂り、伸びすぎてしまうのです。何事も適量とバランスが大切ですね。
日当たり不足の対策と置き場所
オステオスペルマムの徒長を防ぎ、健康でがっしりとした株に育てるための最善かつ最も重要な対策は、もうお分かりの通り「日当たりと風通しの良い場所」で管理すること。これが何より大切です。
この植物は、最低でも半日(4〜6時間)程度、理想を言えば「もうお腹いっぱいです!」と言うくらい1日中しっかりと日光が当たる環境で、本来の力を発揮します。十分な日光を浴びることで光合成が活発になり、茎と茎の間がキュッと詰まった、丈夫な株に育つのです。日当たりさえ確保できれば、徒長はかなり防げますよ。
ただし、高温多湿が苦手というワガママ(?)な一面もあるため、日本の四季に合わせて置き場所を工夫してあげるのが、上手に育てるプロのテクニックであり、愛情です。
鉢植えの場合
鉢植えの最大のメリットは、なんといっても「お引越し(移動)できること」ですよね。この利点を最大限に活かしてあげましょう。
- 春と秋(生育期):
一番過ごしやすい大好きな季節です。日光を最大限に浴びられるよう、お庭やベランダの一等地に置いてあげてください。 - 夏(休眠期):
ここが最大の難所です。直射日光は強すぎ、高温と湿気で株が夏バテしてしまいます。雨が当たらず、風通しの良い「半日陰」または「明るい日陰」へ避難させてください。具体的には、家の北側や東側の軒下、または落葉樹の涼しい木陰などが理想的な避暑地です。 - 冬(休眠期):
寒さには比較的強い(約-5℃まで耐える品種も!)ですが、強い霜や冷たい寒風に直接当たると、さすがに株が深刻なダメージを受けてしまいます。霜の当たらない軒下や、寒冷地にお住まいの場合は室内の暖房が効いていない、明るい窓辺に取り込むのが一番安全です。
地植えの場合
地植えは一度植えると移動ができないため、最初の場所選びがまさに運命を分けます。日当たりと、もう一つ大事な「水はけ」が良く、夏場に西日がガンガン当たり続けない場所を選んであげてください。例えば、午前中は日が当たり、午後は建物の影になるような場所や、夏だけ葉が茂って木陰を作ってくれる落葉樹の株元なども、とても良い選択ですよ。そして、蒸れを防ぐために、他の植物との間隔(株間)をケチらず、十分にあけて植えることも忘れずに。
夏越しの鍵は「雨よけ」にあり!
オステオスペルマムは乾燥には強いのですが、根が常にジメジメと湿っている状態(過湿)には本当に弱いんです。特に梅雨時期や夕立などで長雨に当たると、株が蒸れて根腐れを起こし、あっけなく枯れてしまうことがよくあります。鉢植えの場合は「ごめんね」と言いながら雨の日は必ず軒下に移動させ、地植えの場合もなるべく建物の軒に近いなど、雨が当たりにくい場所を選ぶことが、夏越しを成功させる何よりの秘訣です。
適切な切り戻し時期はいつ?
伸びすぎてしまったオステオスペルマムの姿をリセットし、再びこんもりと咲かせるための「切り戻し(剪定)」。この「散髪」に最適な時期は、主に年に2回あります。それぞれの目的をしっかり理解して行うと、失敗がぐっと減りますよ。
1回目の最適な時期は、春の花がひと通り咲き終わり、「お疲れ様」と声をかけたくなる梅雨入り前のタイミング(5月下旬~6月頃)です。
これは「夏越しのための剪定」とも言えます。これから来る高温多湿な夏は、オステオスペルマムにとって一番過酷な季節。伸びすぎた枝葉が茂ったままだと、株の中心部が蒸れてしまい、病気になったり根腐れを起こしたりする原因になります。そこで、梅雨入り前にバッサリと切り戻し、風通しを良くしてあげるんです。夏バテしないように、散髪して涼しくしてあげるイメージですね。
2回目の最適な時期は、冬の寒さが本格化する前の秋(11月下旬頃)です。
これは「冬越しのための剪定」です。株をコンパクトに切り戻しておくことで、寒さや霜が当たる面積を減らし、株の体力を温存させてあげられます。冬の寒さで風邪をひかないように、短くカットしてあげる感じですね。このひと手間で冬越しがぐっと楽になり、さらに重要なこととして、翌春の新しい芽吹き(新梢)が良くなり、春にたくさんの花を咲かせるための大切な準備にもなるんです。
真夏と真冬の「強剪定」は絶対に避けてください!
オステオスペルマムは、暑すぎる真夏(7月下旬〜9月上旬)と、寒すぎる真冬(12月下旬〜2月)は、成長がほぼストップする「休眠期」に入ります。人間で言えば、ぐったりと夏バテしていたり、寒さで動けなかったりする状態です。この時期に、体力を消耗させる「強い切り戻し」(=大手術)を行うと、株がダメージから回復できず、そのまま天国に召されてしまう危険性が非常に高くなります。剪定は必ず、気候が穏やかで植物が元気な春(梅雨前)か秋に行いましょう。

伸びすぎた時の剪定方法
いざ、伸びすぎた株を剪定するぞ!と意気込んでも、「どこをどう切ればいいの?」と悩みますよね。正しい方法で行うことで、株へのダメージを最小限にし、確実な再生を促すことができます。いくつかコツがあるので、しっかり押さえていきましょう。
1. 準備するもの:清潔なハサミ
まずは、よく切れる園芸用のハサミを用意してください。このとき、とても大事なのが「清潔であること」。切り口は植物にとって「傷口」と同じです。汚れたハサミを使うと、そこから雑菌が入って病気になることがあります。私たちも、ケガをした時に汚れた絆創膏は貼りませんよね。それと同じです。使用前に刃先をライターで軽く炙ったり、アルコール(消毒用エタノール)で拭いたりして消毒しておくと万全です。
2. 切る位置と深さ:思い切りと勇気
目安として、株全体の高さの約1/2(半分)から1/3程度の高さまで、思い切ってバッサリと切り戻します。「ちょっと怖いな…」と中途半端に枝先だけを切るよりも、しっかり切り詰めた方が、後から出てくる新しい芽の勢いが良くなります。
3. 最重要!:「葉」と「脇芽」を必ず残すこと
ただし、どこを切っても良いわけではありません。これだけは守ってほしい最も重要なルールは、切る位置よりも下に、必ず元気な「葉」や、茎の付け根にある小さな「脇芽(わきめ)」が残っていることを確認することです。全ての葉を切り落として丸坊主にしてしまうと、植物は光合成(栄養を作る活動)ができなくなり、新しい芽を出す体力がなくなってそのまま枯れてしまう可能性があります。「ごめんね、でもここから頑張って!」と声をかけながら、必ず葉を残してあげてください。
4. 「木質化」した茎の扱いに注意
オステオスペルマムを数年育てていると、株元の茎がだんだん茶色く、まるで木の幹のようにカチカチに硬くなる「木質化(もくしつか)」という現象が起こります。これは植物が丈夫に育った証拠でもあるのですが、剪定の際はちょっと注意が必要です。
この木質化した「おじいちゃん」みたいな部分まで深く切り戻してしまうと、新芽が出にくくなるか、最悪の場合、まったく芽吹かなくなってしまいます。
木質化した場合の剪定のコツ(安全策)
木質化が進んだ株を剪定する場合は、以下の手順を踏むと安全です。
- 株元をよく観察し、どこまでが茶色い「木質化部分」で、どこからが緑色の「若い茎」か、境目を見つけます。
- 木質化した部分のすぐ上あたりで、元気な脇芽や葉が出ている箇所を探します。
- その脇芽や葉を必ず残すようにして、その脇芽の「少し上」で茎をカットします。これが優しさです。
こうすることで、残した脇芽が「よし、任せろ!」と次の親枝となって元気に伸びてきてくれます。
剪定した茎は「挿し穂」で増やせますよ
切り戻しでカットした茎は、捨てる前にちょっと待って!木質化していない、先端の元気な緑色の茎は、「挿し穂(さしほ)」として新しい株(クローン)を増やすのに使えます。
葉を先端の2〜3枚だけ残して他は取り除き、切り口をカッターなどで斜めにスパッとカットします。その後、30分ほどコップの水に浸けて(水揚げ)、市販の挿し木・種まき用の清潔な土に挿します。土を乾かさないように明るい日陰で管理すれば、数週間で根が出てくることがありますよ。株の「保険」として更新するのもオススメです。
地植えで伸びすぎの対処法
地植えのオステオスペルマムは、鉢植えとは違い、根を張るスペースに制限がありません。「ここは天国だ!」とばかりに、環境が合うと想像以上に大きく育ち、伸びすぎるだけでなく、横にもどんどん広がって他の植物の領域を圧迫してしまう…なんてこともあります。
基本的な対処法は鉢植えと考え方は同じです。梅雨前(5月下旬~6月)と秋(11月下旬)の年2回の切り戻しは、地植えの場合こそ「必須の作業」と言えます。地植えは特に株が密集して蒸れやすいため、梅雨前の切り戻しは、株の中心部までしっかりと風が通るように、内側に向かって伸びている元気のない枝なども整理する意識で行いましょう。
もし、切り戻しをしてもすぐに伸びすぎてしまう場合や、どうも株の元気がなくなってきたと感じる場合は、植え付けた場所の環境そのものがオステオスペルマムに合っていない(特に水はけが悪すぎる)可能性もあります。
地植えの環境を再チェックしてみましょう
- 水はけは良いですか?: 雨が降った後、その場所にいつまでも水たまり(水たまり)ができるような場所は最悪です。根が呼吸できず、根腐れの原因になります。
- 日当たりは十分ですか?: 植えた当初は日当たりが良くても、数年経って周りの木々が成長し、日陰になっていないか確認しましょう。
もし環境が明らかに悪いようであれば、少し手間はかかりますが、秋の涼しくなった時期(9月下旬〜10月)に、より水はけと日当たりの良い場所へ「お引越し」(移植)することを強く検討しましょう。その際、植え穴に腐葉土だけでなくパーライトや軽石を少し混ぜておくと、土の水はけが改善されて喜びますよ。
また、冬の寒さが厳しい地域(寒冷地)で地植えにしている場合は、秋に切り戻しを行った後、株元に腐葉土やバークチップなどをこんもりと厚めに敷いて覆う「マルチング」をしてあげてください。これが冬用の「暖かいお布団」代わりになり、土の凍結や強い霜から株を守り、安全に冬越しできる確率が格段に上がります。
鉢植えの管理ポイント
鉢植えのオステオスペルマムを伸びすぎさせず、毎年元気に花を咲かせるための管理ポイントは、「季節ごとの置き場所の移動」と「定期的な植え替え」の2点に集約されます。
置き場所の移動については、すでにご説明した通りです。鉢植えの最大の強みである「移動できること」を活かし、徒長が始まったと感じたら、まずは日照不足を疑い、即座に日当たりの良い場所へ移動させましょう。夏は半日陰へ、冬は軒下へ、と「季節労働」のように動かしてあげるのが愛情です。
そして、もう一つ見落としがちな非常に重要なポイントが「植え替え」です。
鉢植えは、土の量が限られた小さな世界です。オステオスペルマムは根の成長も旺盛なため、同じ鉢で1~2年も育てていると、鉢の中が根でパンパンの「満員電車」状態、つまり「根詰まり」を起こします。
根詰まりすると、新しい根を伸ばすスペースがなくなり、水や養分をうまく吸収できなくなってしまいます。その結果、株が弱って元気がなくなり、ひょろひょろと徒長しやすくなるのです。鉢底の穴から根がはみ出していたり、水やりの際に水が土に染み込みにくくなったりしたら、根詰まりのサインです。
最低でも2年に1回、できれば毎年、春(3~4月)か秋(9~10月)の気候が良い生育期に、一回り大きな鉢へ「お引越し」(植え替え)させてあげましょう。植え替える際は、鉢から抜いた根鉢(土と根が固まったもの)の肩や底の古い土を3分の1ほど優しく落とし、固まってぐるぐる巻いている根があれば少しほぐしてから植え付けます。用土は、市販の「草花用の培養土」で十分ですが、それに「赤玉土(小粒)」や「パーライト」を1〜2割混ぜて、さらに水はけを良くしてあげると完璧です。
(再掲)鉢植え:季節ごとの管理ポイント早見表
この表を「お世話カレンダー」として、ぜひ参考にしてみてください。
季節 | 置き場所 | 水やり | 肥料 |
---|---|---|---|
春 (生育期) | 日当たりと風通しの良い屋外 | 土の表面が乾いたらたっぷり | 緩効性肥料と液体肥料を併用 |
夏 (休眠期) | 雨の当たらない半日陰(明るい日陰) | 土が乾いてから(過湿に注意) | 与えない |
秋 (生育期) | 日当たりと風通しの良い屋外 | 土の表面が乾いたらたっぷり | 緩効性肥料と液体肥料を併用 |
冬 (休眠期) | 霜の当たらない軒下や室内 | 控えめに。土が乾いたら少量 | 与えない |
オステオスペルマムの伸びすぎを防ぐ管理術
さて、ここまでは主に「伸びすぎた後」の対処法について解説してきました。でも、ガーデニングの上級者さんは、そもそも伸びすぎさせない「予防」としての管理を実践しているんです。ここでは、オステオスペルマムを常にコンパクトで美しい株姿に保つための、プロの「先手のケア」をご紹介します。
- 株をコンパクトに保つ方法
- 背丈を抑える育て方のコツ
- 切り戻し後に咲かない理由
- 伸びて花が少ない時の改善策
- オステオスペルマム 伸びすぎを防ぐ育て方
株をコンパクトに保つ方法
オステオスペルマムを伸びすぎさせず、あのお店で売っているような、こんもりとまとまった美しい株姿に保つためには、日々のちょっとした2つのお手入れが非常に効果的です。それは「摘芯(ピンチ)」と「花がら摘み」。どちらも簡単なので、ぜひ毎日の習慣にしてみてください。
1. 摘芯(てきしん)
「摘芯(ピンチ)」とは、園芸の基本的なテクニックで、新しく伸びてきた芽(茎)の先端を指やハサミで優しく摘み取ることを指します。これをいつ行うかというと、まだ苗が小さいうちに買ってきた時や、春の切り戻し後に新しい芽が数本伸びてきたタイミングがベストです。
多くの植物には、一番てっぺんの芽(頂芽)を優先して伸ばす「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質があります。摘芯は、この頂芽をあえて摘み取ることで、「てっぺんが無くなったぞ!」と植物に知らせ、その下にある脇の芽(脇芽)の成長を促す作業なんです。一本の茎がひょろ長く伸びるのを防ぎ、代わりに脇からたくさんの枝を出させるんですね。
枝数が増えれば、株全体が密にこんもりと茂ります。そして、枝数が増えた分だけ、その先に咲く花の数も増えるという、まさに一石二鳥の魔法のようなテクニックです。

2. 花がら摘み
これは基本中の基本ですが、サボるとサボらないとでは大違い。咲き終わった花(花がら)をそのままにしておくと、植物は「花が受粉したぞ」と認識し、子孫を残すために「種」を作ろうとします。この種を作る作業は、植物にとって非常に体力(養分)を使う大仕事なんです。
この種作りに体力を奪われると、株全体が疲れてしまい、新しい花を咲かせるためのエネルギーが不足してしまいます。これが、株が弱って姿が乱れたり、花の数が減ったりする大きな原因になります。
花が咲き終わってしぼんできたら、「お疲れ様、きれいだったよ」と声をかけながら、なるべく早く、花茎の根元(付け根)からこまめにハサミで切り取りましょう。花首だけを摘むのではなく、茎ごと切るのがポイントです。これにより、株は「あれ?まだ種ができていない!」と勘違いし、体力を温存しながら次々と新しい花を咲かせようと頑張ってくれます。また、枯れた花びらが葉にくっついて起こる病気やカビの予防にも繋がります。
背丈を抑える育て方のコツ
オステオスペルマムの背丈を不必要に高くせず、横に広がるように、がっしりとたくましく育てるコツは、突き詰めれば「十分な日光」と「適切な肥料管理」の絶妙なバランスにあります。
1. とにかく日光にしっかり当てる(最重要)
これはもう何度もお伝えしている通り、徒長対策の最重要課題です。日照不足は、植物が光を求めてひょろ長くなる最大の原因。夏越し期間(梅雨明け~9月中旬頃)を除いては、とにかく長時間、できれば一日中日光が当たる場所で管理してください。日光をたっぷり浴びて育った株は、茎と茎の間が詰まった(節間が短い)、どっしりと力強い株に育ちます。
2. 肥料(特に窒素)を与えすぎないこと
肥料は植物の成長に不可欠な「ごはん」ですが、与えすぎ、特にその「メニュー」を間違えると逆効果になります。肥料には主に「三要素」と呼ばれる成分があり、それぞれ役割が異なります。
ポイント
肥料の三要素(N-P-K)の役割
市販の肥料の袋にはよく「8-8-8」などの数字が書かれていますが、これがN-P-Kの比率を示しています。
- 窒素 (N):「葉肥え」と呼ばれ、主に葉や茎を大きくする働きがあります。(=体を大きくする)
- リン酸 (P):「花肥え」「実肥え」と呼ばれ、花付きや実付きを良くする働きがあります。(=花を咲かせる)
- カリウム (K):「根肥え」と呼ばれ、根の成長を促し、株全体を丈夫にする働きがあります。(=足腰を強くする)
もうお分かりですね。背丈を抑えたい、つまり茎を伸ばしたくない時に、窒素(N)成分が多い「体を作るごはん」ばかり(例:観葉植物用など)を与えすぎると、花付きが悪くなる代わりに茎ばかりが間延びしてしまうのです。
オステオスペルマムの生育期(春と秋)に肥料を与える際は、窒素が控えめで、「花を咲かせるごはん」であるリン酸(P)成分がバランスよく含まれた、市販の草花用の緩効性肥料(土に置くタイプ)や液体肥料(水で薄めるタイプ)を選びましょう。そして、必ず袋に記載されている規定の量と頻度を守ってください。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。
切り戻し後に咲かない理由
「伸びすぎた株を勇気を出して切り戻したのに、その後まったく花が咲く気配がない…」これはガーデニングでよくある、とても悲しい失敗の一つです。その原因は、ほぼ間違いなく「切り戻しの時期の間違い」か「剪定後の管理不足」のどちらか、あるいは両方です。
1. 最大の原因:時期の間違い(花芽ごと切ってしまった)
これが一番「あるある」な失敗かもしれません。オステオスペルマムの多くの品種は、実は「冬の一定の低温(寒さ)に当たることで、春に咲くための花芽(かが)が作られる」という性質を持っています(これを花芽分化といいます)。
つまり、植物は冬の間に「お、寒くなってきたな。春になったら花を咲かせる準備をしよう」と、茎の先端に目には見えない「花の赤ちゃん」(花芽)を用意しているのです。
それなのに、花芽が準備されている真冬(1~2月)や、さあ咲くぞと準備万端の早春(3月)に、「あ、ちょっと伸びてるな」と強く切り戻してしまうと…どうなるでしょう? そうです、せっかく用意した「春に咲くはずだった花の赤ちゃん」ごと、バッサリ切り落として捨ててしまっているようなものなんです。これが、春に花が咲かない最大の理由です。
春の花をしっかり楽しみたい場合は、冬から春先にかけての強剪定は絶対に避け、花が咲き終わった後の梅雨前(5月下旬~)までグッと我慢しましょう。
2. 切りすぎ(株が弱ってしまった)
剪定の際、葉をほとんど残さずに強すぎる剪定(丸坊主のような状態)をしてしまった場合も危険です。特に木質化した部分しか残っていないと、新しい芽を出す体力が残っておらず、そのまま弱って枯れてしまうことがあります。必ず緑の葉や脇芽を残すのが鉄則です。
3. 剪定後の管理不足(アフターケアの失敗)
無事に適切な時期に切り戻しができても、その後の管理が悪いと花を咲かせることはできません。剪定後の株は、いわば「手術後」のデリケートな状態です。
切り戻した株を日陰に置きっぱなしにしたり、逆に水切れを頻繁に起こさせたり、肥料切れの状態が続いたりすると、株が回復するためのエネルギーを作れず、「花を咲かせる余裕なんてないよ!」と悲鳴を上げてしまいます。切り戻し後は、新しい芽が動き出すまで、特に日当たりと適切な水やりに注意して見守ってあげてください。
伸びて花が少ない時の改善策
「茎ばっかりひょろひょろ伸びて、肝心の花が少ししか咲かない…」という残念な状態は、まさに株が徒長している典型的なサインです。これは、株が「花を咲かせる」ことよりも「生きるために光を求める」ことにエネルギーを使い果たしている状態なんです。この状況を改善するには、一度すべてをリセットし、管理方法を根本から見直すことが最も効果的です。
ステップ1:思い切って切り戻し、株をリセットする
まずは、その伸びきった茎を切り戻しましょう。中途半端に整えるのではなく、適切な時期(梅雨前か秋)であれば、株の半分程度の高さまで思い切ってカットします。これで、徒長した茎を一掃し、株の再生を促します。
ステップ2:環境を改善する(日当たりと風通し)
切り戻した後は、その株にとって最も良い環境、すなわち「日当たりと風通しが最高な場所」に置きます。鉢植えなら移動させ、地植えなら周りの邪魔な植物を整理します。ここで新しく出てくる芽が間延びしないよう、しっかりと日光に当てて育てることが重要です。
ステップ3:適切な肥料を与える
新しい芽が動き出し、株が回復してきたら、「ごはん」である肥料を与えます。この時、与える肥料の種類に注意しましょう。前述の通り、窒素(N)は控えめにし、花付きを良くする「リン酸(P)」成分が多めに含まれた液体肥料(ハイポネックスなど)を、規定通りに薄めて1〜2週間に1回程度与えると、花芽の形成を効果的にサポートできます。
(リン酸が開花に与える影響については、愛知県農業総合試験場の研究資料などでも、その重要性が示されています)
ステップ4:日々の管理(摘芯と花がら摘み)を徹底する
新しい芽が伸びてきたら、適宜「摘芯(ピンチ)」を行なって脇芽を増やし、株をこんもりさせます。そして、待ちに待った花が咲き始めたら、「花がら摘み」をこまめに行い、株の体力を温存させて次の開花を促します。

オステオスペルマム 伸びすぎを防ぐ育て方
ここまで本当にお疲れ様でした。最後に、この記事の総まとめとして、オステオスペルマムが伸びすぎるのを防ぎ、毎年健康に育てるための大切なポイントを、おさらいとしてリストアップしますね。これだけ守れば、きっと大丈夫ですよ。
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オステオスペルマムが伸びすぎる最大の原因は「日照不足」
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日本の「高温多湿」な梅雨と夏も徒長や蒸れを引き起こす
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基本的な対策は「日当たり」と「風通し」の良い場所で管理すること
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夏越しは「雨を避けられる半日陰(明るい日陰)」が最も安全な場所
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すでに伸びすぎた株は「切り戻し」でリセットする
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切り戻しの最適な時期は「梅雨入り前(5-6月)」と「秋(11月下旬)」の年2回
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真夏と真冬の休眠期に強い切り戻しをするのは厳禁
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剪定(切り戻し)は株の半分〜1/3程度の高さまで思い切って行う
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ただし、必ず「元気な葉」や「脇芽」を残して切ること
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茎が茶色く硬くなった「木質化」した部分だけで切ると新芽が出にくいので注意
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地植えは特に蒸れやすいため、梅雨前の切り戻しが重要
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鉢植えは「1〜2年に1回」の植え替えが根詰まりを防ぎ、徒長防止になる
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株をコンパクトに保つには、生育初期の「摘芯(ピンチ)」が非常に有効
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「花がら摘み」をこまめに行うと、株の体力が温存され花付きが良くなる
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「窒素(N)」成分が多い肥料の与えすぎは、背丈が伸びすぎる原因になる
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冬〜早春に切り戻すと「花芽」ごと切り落とし、春に咲かなくなるので注意
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伸びて花が少ない時は「切り戻し」「日照・風通しの確保」「適切な施肥」で仕立て直す