家庭菜園で果樹を育てることは、多くの方にとって一つの夢ではないでしょうか。中でも、初夏に甘酸っぱくジューシーな実をつける「すもも」は、人気の高い果樹の一つです。
しかし、そんなすももについて、「庭に植えてはいけない」という少し気になる話を聞いたことはありませんか?その一言が、せっかくの夢にブレーキをかけているかもしれません。実は、いくつかの重要なポイントを知らずに植えてしまうと、後々の管理に手間取ったり、思い描いていたガーデンライフとは違う結果になったりする可能性があるのは事実です。しかし、それは裏を返せば、事前に正しい知識を身につけ、計画的に準備をすれば、すももは家庭で育てるのに非常に魅力的な果樹であるということです。
この記事では、なぜ「庭に植えてはいけない」と言われるのか、その具体的な理由を深く掘り下げるところから始めます。そして、すももとプラムの意外な関係や、栽培成功のカギを握る特徴と品種選び、さらには美しい花が持つ花言葉まで、すももの基本情報を余すところなく解説します。
その上で、具体的な育て方として、地植えや庭植えでの栽培法、スペースが限られた場所でも楽しめる鉢植えでの管理術、美味しい実をたくさんつけるための剪定テクニックや適切な植え付け間隔、そして気になる「何年で実がなるのか」という疑問にもお答えします。
収穫後の最高の楽しみである、絶品すももジャムの作り方や、栽培中に出てくる細かな疑問を解決するよくある質問コーナーもご用意しました。この記事を最後までじっくりと読めば、すもも栽培に関するあらゆる不安は解消され、自信を持ってあなたの庭へすももを迎える準備が整うはずです。
この記事でわかること
- 「すももを庭に植えてはいけない」と言われる具体的な理由とその対策
- 初心者でも失敗しないための品種選びと、正しい育て方の全手順
- 苗木を植えてから収穫し、美味しく味わうまでのリアルな道のり
- 剪定や病害虫対策など、栽培を成功させるためのプロの管理術
「すももを庭に植えてはいけない」と言われる理由
- すももとプラムの違いとは?
- すももの特徴と代表的な種類
- 適切な植え付け間隔とスペースの確保
- 実付きを左右する剪定のポイント
- 植えてから何年で実がなる?
すももとプラムの違いとは?
すももの栽培を考え始めると、多くの方が「すもも」と「プラム」という二つの言葉の違いに突き当たります。スーパーの果物売り場では両方の名前を見かけることもあり、混乱してしまうのも無理はありません。結論からお伝えすると、植物学的には「すもも」と「プラム」は同じバラ科サクラ属の果物です。では、なぜ呼び方が分かれているのでしょうか。
その背景には、日本への伝来の歴史が関係しています。日本では、古くから栽培されてきた中国原産の系統を「すもも(日本すもも)」と呼び、主に生食用として親しんできました。一方、明治時代以降に欧米から導入されたコーカサス地方原産の系統を、英語名の「Plum」から「プラム」、またはフランス語名の「Prune」から「プルーン(西洋すもも)」と呼び分けるようになったのです。現在では、品種改良が進んだ結果、両者を掛け合わせた品種も多く存在しますが、市場では依然としてこの呼び分けが一般的に使われています。
呼び方 | 主な系統 | 原産地 | 食感・風味の特徴 | 代表的な用途 |
---|---|---|---|---|
すもも・プラム | 日本すもも | 中国 | 果汁が非常に多く、爽やかな酸味と甘みのバランスが絶妙。果肉は柔らかい。 | 生食がメイン |
プルーン | 西洋すもも | コーカサス地方 | 糖度が高く、果肉が緻密でしっかりしている。ねっとりとした濃厚な甘みが特徴。 | ドライフルーツ、ジャム、コンポート、ペーストなど加工用 |
豆知識:すももの名前の由来
すももの和名は、その味わいに由来します。見た目は桃に似ていますが、桃よりも酸味が強いことから「酢桃(すもも)」と呼ばれるようになった、という説が有力です。日本の歴史書である古事記や、最古の歌集である万葉集にもその名が登場することから、いかに古くから日本人に親しまれてきた果物であるかがうかがえます。
すももの特徴と代表的な種類
すももはバラ科サクラ属に分類される落葉小高木で、春には桜によく似た清楚で美しい白い花を咲かせ、夏にかけて美味しい果実を実らせます。栽培を始める前に必ず知っておきたい最も重要な特徴が、多くの品種が「自家不結実性(じかふけつじつせい)」であるという点です。これは、自分の花粉では受粉しても実がなりにくい、あるいは全くならない性質のこと。遺伝的な多様性を保ち、より強い子孫を残すための植物の知恵とも言えます。
この性質のため、すもも栽培で安定した収穫を目指すには、実をつけたいメインの品種の木と、その品種と開花時期が合い、花粉の相性が良い「受粉樹」となる別の品種を、蜂などが届く距離に一緒に植える必要があります。品種選びの際は、この受粉の相性を確認することが、成功への第一歩となります。
初心者にもおすすめの代表的な品種
ここでは、家庭栽培で人気があり、比較的育てやすい代表的な品種を、より詳しくご紹介します。
品種名 | 自家結実性 | 特徴・味わい | 相性の良い受粉樹 |
---|---|---|---|
サンタローザ | あり | 1本でも実がなりやすく、他の品種の受粉樹としても非常に優秀な万能品種。果肉はジューシーで、甘みと酸味のバランスが絶妙。豊産性で育てやすいため、初心者が最初に選ぶ品種として最適です。 | 不要(他の多くの品種の受粉樹になる) |
大石早生(おおいしわせ) | なし | 日本で最もポピュラーな品種の一つ。6月下旬から収穫できる早生種で、いち早く夏の味覚を楽しめます。果汁が多く、爽やかな酸味が特徴です。 | サンタローザ、ソルダム、ビューティー |
ソルダム | なし | 緑色の果皮とは対照的に、果肉が真っ赤なのが特徴。甘みの中にしっかりとした酸味があり、濃厚な味わいです。生食はもちろん、ジャムやコンポートにすると美しい色に仕上がります。 | サンタローザ、大石早生 |
貴陽(きよう) | なし | 世界一重いすももとしてギネス記録に認定されたこともある大玉種。糖度が非常に高く、酸味は控えめで、桃のような芳醇な香りと緻密な果肉が楽しめます。栽培難易度はやや高めですが、その味は挑戦する価値ありです。(参照:果物ナビホームページ) | サンタローザ、ソルダム、ハリウッド |
品種選びで失敗しないための鉄則
もし庭に1本しか植えるスペースがない、あるいは管理の手間を最小限にしたい場合は、迷わず自家結実性のある「サンタローザ」を選びましょう。複数の品種を植える楽しみを味わいたい場合は、苗木を購入する際に園芸店の専門スタッフに相談し、開花時期や受粉の相性が良い組み合わせを確認するのが最も確実な方法です。
適切な植え付け間隔とスペースの確保
「すももを庭に植えてはいけない」という警告の根底にある最も大きな要因が、この物理的なスペースの問題です。購入したばかりの苗木はひょろりとしていて場所を取りませんが、すももの木は生育旺盛で、数年もすれば最終的に樹高は2m~4m、枝が左右に広がる幅(樹冠)も直径3m~4mほどに堂々と成長します。この成長を見越さずに植え付けてしまうと、様々な問題を引き起こす原因となります。
スペース不足が招く具体的な問題点
- 日照不足と風通しの悪化:
枝が密集し、木の内部まで日光が届かなくなります。これにより、果実の色づきが悪くなったり、糖度が上がらなかったりします。また、風通しが悪くなることで湿度が高まり、病害虫の絶好の住処となってしまいます。 - 作業性の低下:
木が大きくなりすぎたり、壁や他の植木と近すぎたりすると、剪定や消毒、収穫といった日常の管理作業が非常にやりにくくなります。脚立を立てるスペースさえない、という事態にもなりかねません。 - 近隣トラブル:
成長した枝が隣の敷地に越境してしまったり、秋の落ち葉が迷惑をかけてしまったりと、ご近所付き合いに影を落とす原因になる可能性があります。これは絶対に避けたい問題です。
これらの問題を未然に防ぐため、地植えで栽培する場合は、木の中心から最低でも半径2m~3mの範囲には他の障害物がない場所を選びましょう。受粉樹を含めて2本以上を植える場合は、それぞれの木の間隔を最低でも4m~5mは確保するのが理想的です。将来、木が大きく枝を広げ、その周りであなたが楽に作業している姿を具体的にイメージすることが、植え付け場所選びの最大のコツです。
「とりあえず植える」が後悔の始まり
「庭のこの隙間で大丈夫だろう」という安易な判断が、数年後の大きな後悔につながります。一度植えて大きく育った木を移植するのは非常に困難です。植え付けは、すもも栽培における最初の、そして最も後戻りできない重要な決断だと心得て、慎重に場所を選定してください。
実付きを左右する剪定のポイント
すもも栽培において、美味しい果実を毎年安定して収穫するための最重要作業と言っても過言ではないのが「剪定」です。「手入れが大変だから庭に植えてはいけない」という意見は、この定期的な剪定の手間を指している場合がほとんどです。
しかし、剪定は単なる手間ではなく、すももの木を健康に保ち、高品質な果実を得るための積極的な投資です。剪定を怠ると、枝は無秩序に伸び放題となり、木は自身の枝葉で覆われ、日当たりも風通しも最悪の状態になります。その結果、病害虫が蔓延し、果実は小さく味も悪くなり、さらには一年おきにしか実がならない「隔年結果」という現象も起こりやすくなります。
剪定の目的と基本
剪定の適期は、葉が完全に落ちて木の骨格がはっきりと見える冬期(12月~2月頃)です。この時期に行う剪定には、主に以下のような目的があります。
- 樹形を整える:木の骨格を作り、大きさをコントロールします。家庭では、中央の幹を低く抑え、主となる枝を2~3本、斜め上方に広げる「開心自然形」という樹形が、管理しやすくおすすめです。
- 日当たりと風通しの改善:不要な枝を切り落とし、木の内部まで日光と風が通り抜けるようにします。これにより光合成が促進され、病気の予防にもなります。
- 品質向上:枝の数を制限することで、残された枝や花芽に栄養が集中し、結果として大きくて甘い果実が育ちます。
- 樹勢の維持:古い枝を整理し、新しい元気な枝の発生を促すことで、木全体の若返りを図り、長く収穫を続けられるようにします。
優先的に剪定すべき枝
剪定の際は、まず以下の特徴を持つ枝(忌み枝)から切り落としていきましょう。
これだけは切る!不要な枝(忌み枝)の見分け方
- 徒長枝(とちょうし):真上に勢いよく伸びている枝。養分を浪費し、樹形を乱します。
- 内向枝(ないこうし):幹の中心に向かって伸びている枝。木の内部を混み合わせます。
- 交差枝(こうさし):他の枝と交差して絡まっている枝。擦れて傷の原因になります。
- 平行枝(へいこうし):すぐ近くで同じ方向に伸びている枝。どちらか一方を間引きます。
- 枯れ枝・病気枝:見た目に枯れていたり、病気の症状が見られたりする枝。病気の蔓延を防ぐためにも必ず除去します。

参考:すももの剪定方法は? 時期と手順、品種別の作業ポイント-minorasu(ミノラス
植えてから何年で実がなる?
愛情を込めて植え付けた苗木が、いつになったら可愛い実をつけてくれるのか。これは栽培を始める誰もが抱く、期待に満ちた疑問でしょう。焦る気持ちも分かりますが、すももも他の多くの果樹と同様に、植えてすぐに収穫が始まるわけではありません。一般的に、すももの苗木が大地にしっかりと根を張り、安定してまとまった量の実を収穫できるようになるまでには、植え付けから約3~4年の歳月が必要です。
この期間は、木が将来たくさんの果実を支えるための、丈夫な体を作るための大切な準備期間です。
- 植え付け1~2年目:
この時期の木の最優先事項は、根を広げ、幹を太くし、骨格となる枝を伸ばすことです。もし花が咲いたとしても、ここは心を鬼にして摘み取ってあげましょう。そうすることで、木は実を作るためのエネルギーを自身の成長に集中させることができ、結果的に将来の収穫量を増やすことにつながります。 - 3年目以降:
木に体力がついてくると、いよいよ花を咲かせ、結実が期待できるようになります。最初のうちは収穫量も少ないかもしれませんが、木が成熟するにつれて、その数は年々着実に増えていくでしょう。
そして特筆すべきは、すももの木の寿命の長さです。適切な管理を続けていれば、その寿命は50年以上にもなると言われています。一度庭に植えれば、それは単なる果樹ではなく、家族の歴史と共に成長し、世代を超えて収穫の喜びを分かち合える、かけがえのないシンボルツリーとなり得るのです。

「すももを庭に植えてはいけない」を覆す育て方のコツ
- 育て方「地植え・庭植え」の注意点
- 育て方「鉢植え」ならコンパクトに
- 収穫の楽しみ!すももジャムの作り方
- 意外と知られていないすももの花言葉
- 栽培に関するよくある質問
- 「すももを庭に植えてはいけない」は対策次第
育て方「地植え・庭植え」の注意点
庭に十分なスペースを確保できるのであれば、やはり地植えでのびのびと育てるのが最もおすすめです。大地に直接根を張ることで、木は本来の生命力を最大限に発揮し、水やりや肥料管理の手間も比較的少なく、豊かで安定した収穫が期待できます。
最重要ポイントは「場所選び」と「土作り」
すももは日光をこよなく愛する植物です。植え付け場所は、1日に最低でも6時間以上、できれば午前中から日が当たるような、日当たりが良く、風通しの良い場所を選んでください。日照不足は、花が咲かない、実がならない、味が薄いといった失敗に直結します。 また、水はけの良さも同様に重要です。水はけが悪い土地では根が呼吸できず、根腐れを起こして最悪の場合枯れてしまいます。植え付けの1~2ヶ月前には、直径・深さともに50cm以上の大きな植え穴を掘り、掘り上げた土にたっぷりの腐葉土や完熟堆肥を混ぜ込んで、ふかふかの水はけの良い土壌に改良しておきましょう。これが、その後の木の成長を大きく左右する重要な初期投資となります。
水やりと肥料の年間スケジュール
一度しっかりと根付いてしまえば、地植えのすももに頻繁な水やりは必要ありません。基本的には自然の降雨に任せて大丈夫です。ただし、真夏に何週間も雨が降らず、土がカラカラに乾いているような場合は、朝か夕方の涼しい時間帯にたっぷりと水を与えてください。 肥料は、木の成長サイクルに合わせて年に3回与えるのが理想的なスケジュールです。
地植えすももの施肥カレンダー
- 2月頃(元肥・寒肥):木が休眠している間に、これから始まる一年間の活動の源となる有機質肥料(堆肥、油かすなど)を、木の周囲に掘った溝に施します。ゆっくりと効き、土壌を改良する効果もあります。
- 5月頃(追肥):花が終わり、果実が急速に大きくなり始める時期です。木の栄養消費が激しくなるため、即効性のある化成肥料を与え、果実の肥大を助けます。
- 10月頃(お礼肥):収穫を終えた木は、たくさんの実をつけたことで体力を消耗しています。この時期に速効性の化成肥料を与えることで、木の体力を回復させ、来年の花芽の充実を促します。まさに「一年間ありがとう」の感謝を込めた肥料です。(参考:家庭菜園Q&A 肥料編 - | 全農の情報誌Apron(エプロン))
育て方「鉢植え」ならコンパクトに
「庭はないけれど、どうしてもすももを育てたい」「転勤が多くて地植えはできない」そんな方々の強い味方となるのが鉢植え栽培です。木の大きさを剪定でコンパクトにコントロールできるため、ベランダや日当たりの良い玄関先など、限られたスペースでも果樹栽培の夢を叶えることができます。
鉢植え栽培のメリットと注意点
メリット:
最大の利点は、もちろん省スペースであることです。また、鉢ごと移動できるため、日当たりの良い場所に動かしたり、台風の接近時に軒下に避難させたり、寒冷地では冬の間だけ室内に取り込んで冬越しさせたりといった、柔軟な管理が可能です。
注意点:
地植えと比べて土の量が絶対的に少ないため、夏の水切れには細心の注意が必要です。土が乾燥しやすく、真夏は朝夕2回の水やりが必須になることもあります。また、数年経つと鉢の中で根がいっぱいになり「根詰まり」を起こします。これを放置すると木の成長が止まってしまうため、2~3年に1度は、一回り大きな鉢に植え替える作業が必要不可欠です。
鉢選びから植え替えまで
最初の鉢は、苗木の大きさにもよりますが、10号(直径30cm)以上の深さがある大きめのスリット鉢などがおすすめです。用土は、水はけと保水性のバランスが良い市販の「果樹用培養土」を利用するのが最も手軽で失敗がありません。 植え替えは、木が休眠している冬期(12月~2月)に行います。古い鉢から木を慎重に抜き、固まった根鉢の土を3分の1ほど優しくほぐし、古い根や傷んだ根を切り詰めてから、新しい土で一回り大きな鉢に植え付けます。
摘果(てきか)で木を守る
鉢植え栽培では、木の体力が限られているため、実をたくさんつけすぎると木が弱ってしまいます。花がたくさん咲いて小さな実がたくさんついたら、もったいないと思わずに思い切って数を減らす「摘果」という作業を行いましょう。形の良い実を数個残すことで、養分が集中し、一つ一つの実が大きく美味しく育ちます。
収穫の楽しみ!すももジャムの作り方
手間ひまかけて育てたすももを、自分の手で収穫する瞬間は、何物にも代えがたい喜びです。特に、樹の上で完熟させたもぎたてのすももは、輸送のために早採りされる市販品とは全く別次元の、濃厚な甘さと芳醇な香りを放ちます。その感動的な美味しさを、ぜひジャムにして長く楽しんでみませんか。
感動の美味しさ!皮ごと作るルビー色のすももジャム
すももの美しい赤い色素(アントシアニン)や、ジャムにとろみをつける天然の成分(ペクチン)は、皮と実の間に多く含まれています。そのため、皮ごと煮込むのが、色鮮やかで美味しいジャムを作る最大のコツです。
【材料】
- すもも:500g(よく洗い、種を取り除いて4~8等分にカットする)
- グラニュー糖:200g~250g(すももの重量の40%~50%が目安。甘さはお好みで調整)
- レモン汁:大さじ1(色止めと、とろみを引き出す効果)
【作り方】
- ホーローかステンレスの鍋に、カットしたすももとグラニュー糖を入れ、全体をよく混ぜ合わせます。そのまま30分~1時間ほど置き、すももから水分(果汁)が出てくるのを待ちます。
- 鍋を中火にかけ、木べらなどで焦げ付かないように絶えずゆっくりと混ぜながら煮詰めていきます。
- 沸騰してくると、灰汁(あく)がたくさん浮いてきます。この灰汁を丁寧に取り除くことで、雑味のないクリアな味わいのジャムになります。
- 全体的にとろみがつき、木べらで鍋底をかいたときに一瞬道ができるくらいになったら、仕上げにレモン汁を加えて全体を混ぜ、火を止めます。
- ジャムが熱いうちに、煮沸消毒した清潔な保存瓶に口切りいっぱいまで詰め、蓋を固く締めて逆さまにして冷ませば完成です。
ジャムだけじゃない!収穫後のアレンジレシピ
手作りジャムはパンやヨーグルトに添えるだけでなく、炭酸水で割ってすももソーダにしたり、肉料理のソースの隠し味に加えたりと、様々なアレンジが楽しめます。他にも、シロップで煮る「コンポート」や、氷砂糖と一緒に漬け込む「果実酒」なども、すももの美味しさを存分に味わえるおすすめの楽しみ方です。
意外と知られていないすももの花言葉
すももの魅力は、夏に味わえる美味しい果実だけではありません。まだ肌寒い早春、他の木々がまだ眠りについている中で、葉が出るよりも先に、純白の美しい花を枝いっぱいに咲かせます。その姿は桜や梅にも似ており、春の訪れを告げる清楚な花木として、観賞価値も非常に高いのです。
そんなすももの花に添えられた花言葉は、「忠実」「貞節」「困難に打ち勝つ」です。
これらの花言葉は、厳しい冬の寒さにじっと耐え、春になると必ず約束を守るかのように一斉に花を咲かせる、その健気で力強い姿に由来すると言われています。何か新しいことを始める春に、庭でこの花が咲いているのを見ると、きっと前向きな勇気をもらえることでしょう。果実の収穫という実利的な楽しみだけでなく、こうした季節の移ろいや植物の持つ物語を感じられるのも、庭木としてすももを迎える大きな魅力の一つです。
栽培に関するよくある質問
ここでは、すもも栽培を始めるにあたって、多くの方が抱くであろう疑問点について、Q&A形式で詳しくお答えします。
Q1. 害虫対策は具体的にどうすればいいですか?
A1. すももは比較的丈夫な果樹ですが、いくつかの害虫には注意が必要です。特に問題となるのは、アブラムシ、カイガラムシ、そして果実の中に侵入するシンクイムシ類です。
主な害虫と対策
- アブラムシ:新芽や若い葉に群生し、樹液を吸って木を弱らせます。見つけ次第、牛乳をスプレーしたり、食品由来のスプレー剤で対処したりするのが手軽です。数が増える前に早めに対処しましょう。
- カイガラムシ:幹や枝に張り付いて樹液を吸います。成虫は硬い殻で覆われ薬剤が効きにくいため、冬の休眠期にマシン油乳剤を散布して越冬中の虫を駆除するのが効果的です。
- シンクイムシ類:果実の中に卵を産み付け、幼虫が内部を食い荒らします。被害果は食べられなくなるため、予防が何より重要です。最も確実で安全な対策は、実が小さいうちに一つずつ袋をかける「袋がけ」です。少し手間はかかりますが、無農薬で美しい果実を収穫するための最良の方法です。
また、全ての病害虫対策の基本は、剪定によって日当たりと風通しを良い状態に保つことです。これにより、病害虫が発生しにくい環境を作ることができます。
Q2. 花はたくさん咲くのに、実がなりません。なぜですか?
A2. この問題の最も多い原因は、やはり「受粉」がうまくいっていない可能性です。何度か触れましたが、ほとんどのすももは自家不結実性です。植えた品種の開花時期に、花粉の相性が良い受粉樹の花が近くで咲いていなければ、蜂などの虫が花粉を運んでくれないため、結実には至りません。
もし受粉樹があるにも関わらず実がならない場合は、開花時期に雨が続いて虫の活動が鈍かったり、そもそも都市部で花粉を運ぶ虫が少なかったりする可能性が考えられます。その場合は、「人工授粉」を試してみましょう。柔らかい筆や綿棒、耳かきの梵天などで、受粉樹の花の中心(雄しべ)を優しくなでて花粉を取り、それを実らせたい木の花の中心(雌しべ)にちょんちょんと付けてあげるだけです。この一手間が、収穫量を劇的に改善することがあります。
Q3. 収穫のベストなタイミングがわかりません。
A3. 家庭栽培の最大の特権は、樹の上で果実が完全に熟すのを待って収穫できることです。収穫のベストタイミングを見極めるポイントは以下の3つです。
- 色:品種本来の鮮やかな色(赤や紫色など)が、果実全体にムラなく広がっているかを確認します。
- 香り:熟したすももは、甘くフルーティーな香りを放ち始めます。木の近くに寄って、香りを確認してみましょう。
- 柔らかさ:果実を優しく指で押してみて、石のように硬い状態から、わずかに弾力を感じるくらいの柔らかさになっていれば収穫のサインです。
収穫する際は、果実を強く引っ張るのではなく、軸の部分を軽くひねるようにすると、きれいに採ることができます。市販品では決して味わえない、完熟もぎたての感動的な美味しさをぜひ堪能してください。
「すももを庭に植えてはいけない」は対策次第
この記事を通じて、「すももを庭に植えてはいけない」という言葉が、決してすももを栽培してはいけない、という意味ではなく、「無計画に植えてしまうと後悔する可能性がある」という、先人たちの経験に基づいた親切な警告であることがお分かりいただけたかと思います。スペースの問題、受粉の仕組み、そして剪定という手入れの必要性。これらのポイントを事前に理解し、しっかりと対策を講じれば、すももはあなたのガーデンライフをこの上なく豊かにしてくれる素晴らしいパートナーになります。
春には心を和ませる美しい花が咲き、夏には家族みんなで楽しめる甘酸っぱい果実が実る。そしてその実をジャムにすれば、冬の間も食卓を彩ってくれる。一本の木がもたらしてくれる恵みは、計り知れません。さあ、あなたもこの記事を参考に、計画的に、そして愛情を込めて、すもも栽培の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
この記事のまとめ
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「すももを庭に植えてはいけない」と言われるのはスペースや手入れの問題が主な理由
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成長後の大きさを考慮し計画的に植えれば問題なく栽培できる
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すももとプラムは同じもので日本では系統によって呼び分けている
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多くの品種は自家不結実性で実をつけるには相性の良い受粉樹が必要
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1本だけ植えるなら自家結実性のある「サンタローザ」が初心者におすすめ
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地植えの場合は日当たりと水はけの良い場所を選ぶことが最も重要
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鉢植え栽培なら省スペースで楽しめベランダなどにも置ける
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美味しい実を収穫するために冬期の剪定は欠かせない作業
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剪定は木の内部まで日を当て風通しを良くすることが目的
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苗木を植えてから実がなるまでは約3年から4年が目安
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木の寿命は50年以上と長く一度植えれば世代を超えて楽しめる
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アブラムシやカイガラムシなどの害虫対策も忘れてはいけない
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果実を虫から守るには袋がけが効果的
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自分で育てた完熟すももは市販品にはない格別の美味しさ
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ポイントを押さえればすももは家庭で果樹栽培を楽しむのに最適な選択肢